[木六駄(和泉流)第5回]老ノ坂から都まで

木六駄(きろくだ)和泉流

場面はまた変わりました。

ここから都までは緩やかな下りで、雪も小降りになり、おいノ坂までとはうって変わって楽な道です。おまけに木六駄は茶屋に残してきたので、半分の牛六頭だけを引いています。まだ酔いが醒めていない太郎じゃは千鳥足に鼻歌交じりで歩いています。

牛に雪が沢山積もっているのを見て「重荷に小付け(小さい荷物)じゃ」と笑ったり、「雪山」のうたいをのんきそうに謡いながら下っていきます。先ほど沓を踏み切ったあめうじがにらむといってにらみ返したりするうちに、もう伯父の家に着いてしまいます。

この場合も、橋掛かりに繋いであった牛を連れて、舞台から橋掛かりへと移動し、最後に橋掛かりから舞台に入って、伯父の家に到着します。

能舞台(平面図)

雪道で十二匹の牛と格闘していた場面との演じ分けが面白いのですが、多少二番煎じ的でもあり、かなりここまで見応えのある演技が続いてきたので、見ていてもちょっと疲れてしまう感じはあります。そのせいでしょうか。この場面の絵は一枚も描かれていません。

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三宅 晶子

横浜国立大学名誉教授。中世日本文学(特に能楽)、古典教育を専門とする。『歌舞能の系譜――世阿弥から禅竹へ』(ぺりかん社、2019年)ほか、能楽・古典教育に関する著書多数。

岩田 千治

奈良大学文学部国文学科。高校・大学で美術部に所属し、第29回奈良県高校生アートグランプリでは、平面の部 特別賞を受賞した。奈良大学の講義ではじめて狂言に接し、その感動をイラストで表現している。

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