[茸 はじめに]登場人物とあらすじ

茸(くさびら)

登場人物

シテ(主役)  山伏
アド(相手役) 男
アド(相手役) 鬼茸
アド(相手役) 茸たち

山伏は特別な人物

一般的に山伏は、霊験を得るため山野で修験(しゅげん)(どう)の修行をする行者のことですが、狂言の中では修行によって超能力を得ることができた特別な人ということになっており、山伏というだけで、とりあえず尊敬される対象ということになっています。

修験道といえばえんのぎょうじゃを祖としているところが多く、狂言でもほとんどの場合がそうなっています。山伏特有の装束を身につけ、歩行も両手を張って広げ、一歩毎に膝を垂直まで上げて歩きます。

あらすじ

男の家に一夜のうちに多くの茸が生え、取っても取っても生えてくるので、以前からよく知る山伏に祈祷を頼む。

気楽に引き受けた山伏だったが、男の家に行くと人の背丈くらいもある茸がにょきにょき生えている。早速祈祷を始めるが、祈る程に茸は増え続け、あげく男や山伏にいたずらまで始める。

毒々しい色の鬼茸までも現れて、とうとう二人は茸に追い立てられて、逃げていく。

「茸」について

山伏狂言の一つです。

男とのやり取りも面白く、また沢山の茸たちが登場して、賑やかな狂言です。私は大学生の時野村狂言の会の、六世万蔵の古希のお祝いの会で、素晴らしく面白い〈木六駄〉(これは後日紹介します)を見た後、最後の出し物としてこの狂言を見ました。沢山のお孫さんやお弟子さんたちが茸になって続々登場して、とても楽しかった記憶があります。この時の印象が強く残っていて、華やかで気楽に見られる賑やかな狂言だと思っています。

茸に大勢必要なので、一族繁栄を象徴するご祝儀的な意味で、めでたい催しによく掛かります。

岩田さんは、山伏のキャラクターが面白かったようで、表情豊かな山伏を描き出していますし、様々な茸たちが動き回ったり取り憑いたりする様子を、生き生きと再現しています。

通常狂言初心者の学生たちは、余りのシュールさにびっくりするようですが、そこがまた狂言の荒唐無稽な面白さですね。

大蔵流では長く中絶していましたが、幕末に「菌」と表記して復活させました。今回は「野村万作狂言集」第一巻1) の映像を見ての報告で、大蔵流のものは見せていません。

1) 野村万作,野村萬斎:狂言でござる DVDビデオ「野村万作狂言集」, 第1巻,角川書店,2001年.

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特集

三宅 晶子

横浜国立大学名誉教授。中世日本文学(特に能楽)、古典教育を専門とする。『歌舞能の系譜――世阿弥から禅竹へ』(ぺりかん社、2019年)ほか、能楽・古典教育に関する著書多数。

岩田 千治

奈良大学文学部国文学科。高校・大学で美術部に所属し、第29回奈良県高校生アートグランプリでは、平面の部 特別賞を受賞した。奈良大学の講義ではじめて狂言に接し、その感動をイラストで表現している。

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