
そうこうするうちに、目が痒くなってきて、だんだん明るく感じるようにもなります。

そしてとうとう目が明きます。

まずむずがゆくなった目が光を感じ、やがて見えるようになるという過程を、テンポ良くスピーディーに演じていきます。
絵でもすごく喜んでいますね。

ところが、実は目を開けて貰うために条件が付けられていたのです。
一体どんな?!
困ったことは後回し、今は再び見えるようになった幸せを噛みしめようと思っています。

今までの習慣のままに、杖を付いてよろよろと歩きかけますが、もう目が見えるので、杖は入らないことに気づき、その場で捨ててしまいます。
思わず杖を付いていたというところは、クスッと笑える場面ですね。さぞかし嬉しいのだろうなあと、見ている方もウキウキした気分になるところですが、幸せ気分が画面に溢れていますね。
画面が舞台全体に切り替わると、向かって右奥、笛座近くに妻が座っているのが見えます。先ほど家の前で見送った後、妻は退場したはずなのですが、実はその場に静かに座ったのです。ビデオではそこを映していないので、この場面に来るまで気づきませんでした。狂言で良く使う演出法です。もう一度登場する人物の場合、立ち去った体で笛座や正面奥などに、座ります。登退場で主役の演技の邪魔をしない配慮でしょうか。居ないつもり、見えないつもりということなので、存在感を消しています。
