
場面は変わって、大勢の参籠者がいる大部屋といった感じになります。 たった一人座ったままで、落語における話芸を見ているような、一人狂言の見せ場です。
まず左を向いて言葉を交わしたのは、近江からの参拝者で、眼病を患っていてはるばるやって来たと告げられたようです。同じような身の上なので、互いに申し合わせて今宵を過ごそうと言い合わせます。

次に右を向いて言葉を交わしたのは、願成就のお礼参りに上方からやって来た人で、うらやましがっています。
そうこうするうちに夜も更け、地蔵の法号と経陀羅尼を唱える声だけが聞こえるようになりましたので、男もまどろむことにします。
たった一人の演技力によって、地蔵堂の様子が活写されます。