[川上 第4回]お籠もりの時に出会った人々

川上(かわかみ)

場面は変わって、大勢のさんろう者がいる大部屋といった感じになります。 たった一人座ったままで、落語における話芸を見ているような、一人狂言の見せ場です。

まず左を向いて言葉を交わしたのは、近江からの参拝者で、眼病を患っていてはるばるやって来たと告げられたようです。同じような身の上なので、互いに申し合わせて今宵を過ごそうと言い合わせます。

次に右を向いて言葉を交わしたのは、願成就のお礼参りに上方からやって来た人で、うらやましがっています。

そうこうするうちに夜も更け、地蔵の法号ときょうを唱える声だけが聞こえるようになりましたので、男もまどろむことにします。

たった一人の演技力によって、地蔵堂の様子が活写されます。

関連記事

特集

三宅 晶子

横浜国立大学名誉教授。中世日本文学(特に能楽)、古典教育を専門とする。『歌舞能の系譜――世阿弥から禅竹へ』(ぺりかん社、2019年)ほか、能楽・古典教育に関する著書多数。

岩田 千治

奈良大学文学部国文学科。高校・大学で美術部に所属し、第29回奈良県高校生アートグランプリでは、平面の部 特別賞を受賞した。奈良大学の講義ではじめて狂言に接し、その感動をイラストで表現している。

最近の記事
  1. [川上 はじめに]登場人物とあらすじ

  2. [川上 第1回]川上にでかける男と見送る妻

  3. [川上 第2回]道中

TOP
CLOSE