[附子 第4回]「附子」を食べる二人

附子(ぶす)

砂糖だとわかって舌鼓を打ちながら貪り喰う二人の様子が、かなりたっぷりと演じられる場面です。

蓋を開けたかずらおけから直接、扇をしゃもじ代わりに使って、美味しそうに食べます。

この扇を使ってものを食べる演技などは、落語などとも共通し、全く別物と思っていた狂言と落語は、実は近い世界にあるのです。

最初は仲良く交互に食べていたのですが、そのうちどちらも独り占めしようとしてちょっとした争いとなり、次郎じゃが最後のひとすくいを食べて、綺麗さっぱり無くなります。

中盤の見せ場でもあり、結構長々と演じられるので、どんなに息の合った名人芸で見せられても、ちょっとだれてくるところで、岩田さんはそこをたった1カットで済ませてしまっています。

一緒に授業を受けていた学生の中には、「太郎冠者と次郎冠者が、必死に砂糖の取り合いをしている場面が面白い。」と感じた人もいました。 こういうところ、その人の興味がどこにあり、どんな風に捉えているのかがわかって、面白いですね。

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三宅 晶子

横浜国立大学名誉教授。中世日本文学(特に能楽)、古典教育を専門とする。『歌舞能の系譜――世阿弥から禅竹へ』(ぺりかん社、2019年)ほか、能楽・古典教育に関する著書多数。

岩田 千治

奈良大学文学部国文学科。高校・大学で美術部に所属し、第29回奈良県高校生アートグランプリでは、平面の部 特別賞を受賞した。奈良大学の講義ではじめて狂言に接し、その感動をイラストで表現している。

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