[木六駄(大蔵流)第1回]主人から使いを頼まれる太郎冠者

木六駄(きろくだ)大蔵流

太郎じゃ

和泉流と同じ装束です。労働者の仕事着としての決まりの衣装です。

袖も袴も短く、動きやすくなっています。

太郎冠者・主人が登場するとき、茶屋も静かに橋掛りを渡って登場し、一の松辺りに着座しています。登場の時間を改めて取ることなく、場面転換を速やかにするための工夫でしょう。

峠の茶屋も同じような扮装をしています。

主人

こちらも和泉流と同じ装束です。長袴の上下で、だん熨斗のしちいさがたなを腰に挿しています。

伯父も同じような装束です。

建築用の材木を30本、一匹の牛に5本ずつ積んで、六頭の牛を連れていきます。

主人の命令には従順で、言葉遣いや態度も丁寧です。

主人の方も大雪になりそうな中を使いにやるのを気遣い、手土産にするのと同じ上等なもろはくを、酒好きな太郎冠者にもたっぷり飲ませるというので、太郎冠者は機嫌良くお使いを引き受けます。(主人・太郎冠者退場)

三宅 晶子

伯父への手土産として、諸白を一樽持っていきます。諸白は米も麹もしっかり精米して作った清酒のことで、一般庶民には手の出ない、上等な酒です。誰でも美味しい清酒が飲めるのが当たり前の現代とは違って、めったに口にすることのできないものであることは、この狂言において重要なポイントの一つでしょう。

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三宅 晶子

横浜国立大学名誉教授。中世日本文学(特に能楽)、古典教育を専門とする。『歌舞能の系譜――世阿弥から禅竹へ』(ぺりかん社、2019年)ほか、能楽・古典教育に関する著書多数。

岩田 千治

奈良大学文学部国文学科。高校・大学で美術部に所属し、第29回奈良県高校生アートグランプリでは、平面の部 特別賞を受賞した。奈良大学の講義ではじめて狂言に接し、その感動をイラストで表現している。

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