

太郎冠者
いつもと同じ装束です。労働者の仕事着としての決まりの衣装です。
袖も袴も短く、動きやすくなっています。肩衣のデザインは、野村家ほど個性的にはしていないようです。

主人
こちらもいつもの装束です。長袴の上下で、段熨斗目、小刀を腰に挿しています。
まず主人が登場し、昨夜太郎冠者の家の前を通ったら謡の声がしたのだけれど、太郎冠者が謡を謡うとは今に至るまで知らなかったので、呼び出して謡わせようと思うと語り、太郎冠者を呼び出します。はじめ自分ではないと誤魔化そうとしますが、「幼少から召し使うおまえの声を聞き間違えるはずはない」と責められ、「酔って帰って女房の膝を枕にちょっと謡ったのがお耳に入ったのでしょう」と白状します。
「面白かったからちょっと聞かせてくれ」と所望されますが、太郎冠者は迷惑顔で断ります。主人は意に介さずしつこく謡えと迫ります。太郎冠者はお酒を飲まなければ謡えないと、なんとか免れようとしますが、主人はじゃあお酒を取ってくるから待っておれと、自ら台所へ行ってしまいます。

太郎冠者としては、ここで謡ってしまうと、これから何度でも謡わされるに違いないと迷惑がっていましたが、「謡ひようがある」と、逃れるための良い方法を思いついたようです。

ここは主人も太郎冠者も立って言葉を交わしているだけなので、絵は扮装だけになっていますね。
主人と太郎冠者の関係
「幼い頃から召し使っているおまえの声を聞き間違えるはずはない」と、主人は自信満々で言っています。茂山家の〈寝音曲〉では、主人は太郎冠者に優しく、太郎冠者のことはなんでもお見通しといった親密性があります。身分の違いを越えて親密な二人の関係が、最初から示されています。