
大名は猿を見かけ、猿引に太郎冠者を介して「能猿」(芸能をする猿)かと問いかけます。猿引は自慢げに能猿だと答えます。

身分の高い者が庶民と直接言葉を交わすことはないので、大名は常に太郎冠者に聞きたいこと、言いたいことを言って、それをその通り太郎冠者が猿引に伝えます。同様に猿引から太郎冠者を通じて大名に答えています。
どちらも本人の言うことがちゃんと聞こえていますから、ちょっとまどろっこしい感じがありますね。けれども能でも狂言でも、この作法は几帳面に守られています。
岩田さんはその様子を一枚の絵にまとめて、それぞれの表情や反応をしっかり捉えてくれています。

名はもっとよく見ようとズカズカ猿に近づいていきます。今まで大人しくしていた猿は、それに反応して大名に飛びかかろうとします。
大名の慌て振りと猿の豹変振りが、可愛く表現されていますね。

太郎冠者は驚いて猿引を叱ります。神妙にお詫びする猿引です。
大名は、猿の毛並みが良く、自分の靱にかける毛皮にちょうどよいと思い、鷹揚に許します。 そして、猿引に直接言葉を掛けます。理由を言わずに無理矢理礼を言って、強引に猿引を承諾させるのです。

大名が直接猿引に声を掛ける場面で、それまでの太郎冠者を介するよそよそしい感じが無くなり、何かありそうと思わせる場面です。

大名は再び太郎冠者に対して、猿の皮を貸すように交渉させます。
靱に掛けるためにずっと探していた、大きくて毛並みが良い理想的な猿皮だと見て取ったのです。

はじめは戯れ言かと思ったくらい突拍子もない要求に、猿引はびっくり仰天。皮を剥いだら猿は死んでしまうのです。
そのことを伝えると、礼を言わせておいて、断るとは非礼だと大名は怒り、1・2年したら皮は返すから問題ないだろうと、ケロッとしています。

人非人としか思えないような大名の言い草に、ただただびっくりしますね。
狂言の中で、いったい大名はどのような人物として描かれているのでしょう。太郎冠者とならんで、興味深いキャラクターですね。