[寝音曲(和泉流)第6回]結末

寝音曲(ねおんぎょく)和泉流

夢中になって舞い終わると同時に、主人の雷が落ちます。

ようやく我に返った太郎じゃですが、悪びれる様子は無く、笑いながら逃げていきます。さてこのあとどんなお仕置きが待っているのでしょう。主人は「やるまいぞ、やるまいぞ」と追いかける、追い込み型の定型で退場します。結末は描かれない、狂言らしい終わり方です。

主人が太郎冠者の嘘にいつから気づいているのか、どのくらい怒っているのか、これはその時その時で色々な演じ方があるのではないでしょうか。

また太郎冠者と主人の役を演じる人達の年齢差も、その人間関係に影響します。授業で使用したビデオでは、名人六世万蔵が、息子の万作を相手に演じていますから、若い主人であり、もしかしたら赤ん坊の時から仕えていて、子守をしたりお襁褓むつを替えたりした間柄なのかもしれません。主人役の万作は、とにかく気が短くて怖い主人で、なかなか手強い相手なのですが、万蔵の太郎冠者は、主人が怒っても全然気にしていない、ひょうきんで明るいお調子者のようです。

〈寝音曲〉は現代でもよく演じられる人気曲ですし、動画もいろいろ紹介されているようです。どんな太郎冠者と主人に出会えるか、是非実際の舞台を楽しんでください。

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三宅 晶子

横浜国立大学名誉教授。中世日本文学(特に能楽)、古典教育を専門とする。『歌舞能の系譜――世阿弥から禅竹へ』(ぺりかん社、2019年)ほか、能楽・古典教育に関する著書多数。

岩田 千治

奈良大学文学部国文学科。高校・大学で美術部に所属し、第29回奈良県高校生アートグランプリでは、平面の部 特別賞を受賞した。奈良大学の講義ではじめて狂言に接し、その感動をイラストで表現している。

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