
夢中になって舞い終わると同時に、主人の雷が落ちます。

ようやく我に返った太郎冠者ですが、悪びれる様子は無く、笑いながら逃げていきます。さてこのあとどんなお仕置きが待っているのでしょう。主人は「やるまいぞ、やるまいぞ」と追いかける、追い込み型の定型で退場します。結末は描かれない、狂言らしい終わり方です。
主人が太郎冠者の嘘にいつから気づいているのか、どのくらい怒っているのか、これはその時その時で色々な演じ方があるのではないでしょうか。
また太郎冠者と主人の役を演じる人達の年齢差も、その人間関係に影響します。授業で使用したビデオでは、名人六世万蔵が、息子の万作を相手に演じていますから、若い主人であり、もしかしたら赤ん坊の時から仕えていて、子守をしたりお襁褓を替えたりした間柄なのかもしれません。主人役の万作は、とにかく気が短くて怖い主人で、なかなか手強い相手なのですが、万蔵の太郎冠者は、主人が怒っても全然気にしていない、ひょうきんで明るいお調子者のようです。
〈寝音曲〉は現代でもよく演じられる人気曲ですし、動画もいろいろ紹介されているようです。どんな太郎冠者と主人に出会えるか、是非実際の舞台を楽しんでください。