
さていよいよ謡うというときになって、太郎冠者は実は女ども(妻)の膝枕で寝てでないと声が出ないのだと言い出します。これがさっき思いついた良い方法だったようです。
この辺りは和泉流と同じ展開ですね。
声が出ないと聞いて主人はあっさり自分の膝を貸すから、枕にして謡えと言います。

太郎冠者が断るために考え出した言い訳は、主人には全然通じず、結局主人の膝枕で謡う羽目となりました。
和泉流と違って、身体をほぼ寝かせてしまい、本当に膝枕をして寝ている状態で謡います。
なんとも可愛らしい姿が描かれていますね。本当にこんな感じになります。

ここで小謡を一曲謡います。曲目の指定はありません。大蔵流では〈葛城〉の一節を謡うことが多いようですが、授業で用いたビデオ1)では和泉流と同じ「小原木」で、少し長く謡っています。
1)茂山千作・茂山千五郎・茂山正邦・茂山宗彦・茂山千之丞:シリーズ 現代の狂言 花子・寝音曲,森崎事務所,2003年.
狂言役者の行う基礎のお稽古
狂言の演技法、身体の構え方や運び(歩行)、発声法などは、能を基本形としており、基礎訓練として、能のシテ方の謡や仕舞の稽古、大小鼓・太鼓・笛など囃子方の稽古をしっかり行います。
膝枕など能では考えられない方法ですが、朗々と素晴らしく上手に謡われると、観客はびっくりするやら感動するやら、思いがけない効果があがります。


上手い謡に感心した主人は、座って謡ってみろと言います。手に唾を吐きかけて気合いを入れて謡おうとしますが、どうしても声は出ません。

主人は、ならばもう一度膝を貸すから今度はもっと長々と謡えと言います。