
猿を打たなくて良いことがわかり、猿引は猿に礼を言わせます。
大名も太郎冠者もその様子に心を奪われ、上機嫌です。
猿引は命を助けてもらえたお礼に、猿に舞を舞わせようと提案します。

猿が舞う準備をしている間に、大名は笛座前にくつろぎ(後ろを向いて座る)、太郎冠者に手伝わせて、弓矢と靱を置き、邪魔な笠を取って烏帽子を被り、射籠手を外して、素襖の袖を入れ、寛いだ格好になって床几に掛けます。後見が二人出て、着替えを行います。

この時初めて大名の顔の全体がはっきり見えます。今までは笠に隠れて、表情までは見えなかったのです。そのために不気味な恐怖を抱かせる効果がありました。烏帽子姿になってみると、陽気でのんきなお殿様でした。
この装束替えは「替装束」の小書なればこその効果です。

大名の着替えと並行して常座あたり(舞台向かって左寄り)で、猿引は猿に陣羽織を羽織らせ、烏帽子を付けます。後見が一人出て、着付けします。

この簡単な着付けで、芸を披露する猿という雰囲気ができあがりますね。
この時地謡担当の演者(3・4人)が切り戸口から登場して、正面奥に座ります。


猿が「猿歌」(猿引と地謡が歌う)に合わせて舞を舞うと、大名はたいそう喜んで、扇を続いて太刀を猿引に与えます。

猿は舞を舞いながら、時々大名にちょっかいをします。その様子が可愛くて、大名はもう夢中です。座っていられなくなり、立ち上がって、猿の動きを真似ようとします。

とうとう素襖上下熨斗目(素襖の下に着ていた着物)も太郎冠者に手伝わせて脱いでしまい、それも猿引に与えます。
大名はとうとう下着姿になってしまいました。
猿引は遠慮せず、貰ったものはどんどん片付けてしまいます。

身軽になった大名は、猿と一緒に踊り出します。

猿は猿引に命じられるまま、月見や田植えなどの型を繰り広げます。大名もそれを真似て、面白がっています。

猿の動きはなんとも可愛く、しかも無駄のない美しい動きで感動的です。月見の型など、小さい子供の頃から、何も考えずにいつも同じ角度に手が上がり、顔の向きが決まるまで、繰り返し繰り返し、練習するそうです。その訓練の賜物なのですが、真似をしている大名の役者も、同じように子供時代に訓練したわけで、それが身について大人になって、演技をしているわけです。
岩田さんは猿の動きが特に気に入ったようで、細かな動きも見逃さず、活写しています。