[靱猿(大蔵流)第6回]猿は御幣を持ち、大名はそれを真似て靱を持って、めでたく舞い納める

靱猿(うつぼざる)大蔵流

最後に猿引はへいを猿に渡し、祝言の舞となります。大名は適当な物が見当たらないので、うつぼを幣の代わりにして、真似をします。

一同機嫌良く、舞い納めます。

靭猿の大名

狂言に登場する大名は、どの曲の場合も常人とは異なっていて、常識しらずで浮世離れした感じが濃厚です。おそらく一般の観客たちにとっては雲の上の存在なので、その雲の上感が強調されているのでしょう。実際の大名が観客である場合は、自分とのあまりの違いのために、クレームを付けるよりも笑って済ませるという反応になるよう、配慮されているのではないでしょうか。

中でも〈靭猿〉の大名は、前半の非常識さに対して、後半ガラリと変わって、人の良さ丸出しの幼児のような人物になっています。

初めてこの狂言を見た人は、最初なんてバカで厭なやつだろう、権力を嵩に着て、自分は何をやっても許されるのだと思っている鼻持ちならない人間だと思います。ところが猿の健気さと可愛さ、さらに芸の上手さに素直に感動して、手放しで喜び、自分の持ち物をどんどんやってしまう素直さと人の良さを見せます。ああ、悪い奴じゃないのだと、ホッとする感じですね。

とはいっても、常人とは桁違いに変な大人です。

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三宅 晶子

横浜国立大学名誉教授。中世日本文学(特に能楽)、古典教育を専門とする。『歌舞能の系譜――世阿弥から禅竹へ』(ぺりかん社、2019年)ほか、能楽・古典教育に関する著書多数。

岩田 千治

奈良大学文学部国文学科。高校・大学で美術部に所属し、第29回奈良県高校生アートグランプリでは、平面の部 特別賞を受賞した。奈良大学の講義ではじめて狂言に接し、その感動をイラストで表現している。

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