[唐相撲(現代の狂言)はじめに]登場人物とあらすじ

唐相撲(とうずもう)現代の狂言

登場人物

シテ(主役)  唐の皇帝
アド(相手役) 日本人
アド      通辞
アド      唐人(大勢)
アド      こも持ち(二人)
アド      ひげ
  笛・小鼓・大鼓・太鼓

大曲〈釣狐〉が終わり、いよいよ最後の曲なので、授業としてはおまけの感じで、誰が見ても面白く、気楽に楽しめる〈唐相撲〉を取り上げました。

2000年4月12日に国立能楽堂で収録された『伝統の現在スペシャル 森崎事務所公演 唐相撲』1)で、日本人を野村萬斎、帝王を茂山千之丞、通辞を茂山千五郎(十三世)が勤め、野村万作家(和泉流)と茂山千五郎家(大蔵流)に所属する一族・弟子たちが多数出演する共演の舞台となっています。

1)野村萬斎・茂山千之丞・茂山千五郎・野村万作・茂山千作・茂山七五三ほか:シリーズ 現代の狂言 唐相撲,森崎事務所,2005年.

一門の役者だけで行うのが通常の形ですが、近年では流儀共演も珍しくありません。〈唐相撲〉のように登場人物が多ければ多いほど盛り上がる曲では、他流共演は効果的な方法でしょう。

特にこの時の上演は、現代に生きる伝統芸能という切り口で行われた特別な催しなので、全体の監督も立てた新しい演能形式となっています。

授業最後に、伝統といっても現代に生きているし、新しい形もどんどん取り入れて生まれ変わっているのだということを、知って欲しいという思いもあります。

〈唐相撲〉は大蔵流では、大勢が登場して賑やかに展開するので脇狂言2)に分類されています。和泉流では現代は〈唐人相撲〉という曲名で、雑狂言に分類されています。

2)脇能に対する言葉で、翁付き五番立の演能の際最初の神能の次に上演される曲目。

しょうにょしょうにん日記』天文五(1536)年1月2日に「唐のすまひ」とあるのが本曲で、狂言の最古資料である『天正狂言本』にも同様の曲名で現在とほぼ同じような筋書きが記されており、室町時代から演じ続けられてきた歴史の長い狂言です。

日本の相撲取りが唐の国で皇帝の前で唐人たちと相撲を取り、最後は皇帝を相手にして勝つという趣向です。唐人との取組みは一人でも良いのですが、多ければ多いほど賑やかに楽しいので、近年は古典的な狂言の演技の境界を抜け出して、新趣向で楽しい演出が工夫されることが多いです。

今回使用したビデオもその成功例です。

あらすじ

長らく唐の国に滞在していた日本の相撲取りが、皇帝の御幸を待ち受けている。賑やかな音楽に乗って皇帝一行が到着し、通辞を通して、なんでも奏聞(そうもん)したい者は申し出るよう触れを出す。相撲取りが帰国の希望を申し出ると、名残りの相撲を見せろと言われ、通辞が行事を務め、一行の唐人相手に次々と相撲を取る。唐人たちはおかしな手を使ったり、二人、あるいは大勢でかかっても、ことごとく負けてしまう。

皇帝は見物するうちに自分も相撲を取りたくなる。〔楽〕の演奏に合わせゆったり身ごしらえをして、行事の仕切りでいざ取ろうと相撲取りが皇帝の身体に触れようとすると、皇帝は逃げ、唐人たちは目をむいて静止する。玉体に触れてはいけないのである。皇帝は再び〔楽〕の演奏に乗ってあらこもを身にまとい、改めて相撲を取る。皇帝は最初元気よく善戦するが、すぐに打ち負かされ、相撲取りは「勝ったぞ勝ったぞ」と、さっさと退散する。 皇帝は唐人たちの手車に乗り、朱傘を差し掛けられて、楽しげに退場する。

特集

三宅 晶子

横浜国立大学名誉教授。中世日本文学(特に能楽)、古典教育を専門とする。『歌舞能の系譜――世阿弥から禅竹へ』(ぺりかん社、2019年)ほか、能楽・古典教育に関する著書多数。

岩田 千治

奈良大学文学部国文学科。高校・大学で美術部に所属し、第29回奈良県高校生アートグランプリでは、平面の部 特別賞を受賞した。奈良大学の講義ではじめて狂言に接し、その感動をイラストで表現している。

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