[釣狐(和泉流)第2回]甥の猟師の家にて

釣狐(つりぎつね)和泉流

無事猟師の家に到着し案内を乞います。猟師は伯父がこんな夕刻に突然訪ねて来たことに不審をいだきますが、一応丁重に振る舞います。

はくぞう(に化けている狐ですが、白蔵主とします)は、挨拶もそこそこに、おまえは狐を釣るらしいなと、詰問します。最初とぼけていた猟師ですが、近所の人たちからの情報だと言われると、あっさりそうだと白状します。

人間にとって、狐は捨てるところがないと言われる格好の獲物で、皮は剥いで敷物に、身は料理して食べ、骨は黒焼きにしてこうやくねりに売ると、なんだか楽しげに言います。それを聞いている白蔵主は、いちいちに身の毛のよだつ感じがするらしく、獣らしい反応をします。

白蔵主はこのままではまずいと思ったらしく、狐の執心について恐ろしい物語があるから、聞かせようかとせまります。猟師は釣りは止めるから、是非物語をお聞かせくださいと言います。

白蔵主ははるばる来たので草臥くたびれたからと、しょうを所望します。

床几に掛けて物語る

まとまった見せ場で演者が床几かずらおけが用いられます)に掛けて物語をするという形は、能の場合も同様です。通常は後見が床几を出し、物語の間後ろに控えて動かないように補助します。

ここでも同じような語りの形式が用いられているのですが、ちょっと違うのは、猟師が後見から床几を受け取って、白蔵主を腰掛けさせるのです。白蔵主は前を向いて待っていて、杖でコツンと合図をすると、床几が膝下の位置に置かれます。その時猟師は「お床几で御座る」と、大きな声で乱暴に差し出すので、ちょっとびっくりします。ここでの床几の出し方、腰のかけ方などにも秘事がある部分です。

猟師はそれまで一応丁重に接していたのですが、ここで本当の白蔵主ではないとすでに見極めているのだろうとわかります。

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三宅 晶子

横浜国立大学名誉教授。中世日本文学(特に能楽)、古典教育を専門とする。『歌舞能の系譜――世阿弥から禅竹へ』(ぺりかん社、2019年)ほか、能楽・古典教育に関する著書多数。

岩田 千治

奈良大学文学部国文学科。高校・大学で美術部に所属し、第29回奈良県高校生アートグランプリでは、平面の部 特別賞を受賞した。奈良大学の講義ではじめて狂言に接し、その感動をイラストで表現している。

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