
家来たちの負けっぷりをずっと見ていた皇帝は、自らが相撲を取りたくなり、通辞を通じて相撲取りに告げます。
散々やられた唐人たちは、舞台から橋掛りまでずらりと並んで座り、みんなで歌を謡います。参考として、授業で使用したビデオ1)に添付されている資料に掲載されているものを紹介します。
1)野村萬斎・茂山千之丞・茂山千五郎・野村万作・茂山千作・茂山七五三ほか:シリーズ 現代の狂言 唐相撲,森崎事務所,2005年.
唐音
阿んの長崎の、ひごろ恋すりゃ、君けんくるけんくる、
ばいたかりんぎょう、あんらよし那や、
音づれこいすりゃ、
さいもうすがすんぱかするとは、うんねんの、
ずでれんんず、がだら、志く志く志て、
おいてのあんぱん、
ゆくはるも、あんのうにのたられ、ふうれへれへ、
おにしおにし、さいわいこさいわいこ、
ふだらいきょうふだらいきょうの、
さんちゃこうちゃさ、
せんそせんそせんそ、けんぽけんぽけんぽ、
まっつあかんきんつあ、つさつさつゆ、
こんけんぽんちょんのんちょんちんこんけんぽん、
やんのふく、
あんらづいづい、志ょてとねしょか、
志ょいたらだいてねしょか、
あんないろにけんないろ、けんぷく志ゃにかんぷく、
いきづい屋、ちぃむちぃむちぃむ、
雀の観音やっきみちゅんさいろ、
れいれいれいづのごんぎゃん
れいれいれいづのごんぎゃん、一ぷく一ちょんのんや、
チンナンチンナン、ステレケパアパア
かなり長いですね。意味はちんぷんかんぷんですが、恋歌らしき風情はあるかと思います。今回野村家と茂山家の共演で、老いも若きも、子供までいますが、全員よく知っているようですので、流儀を越えて伝わっている、「唐音」という歌謡なのだと思います。

これが終わった後、舞台後方に控えていた囃子方が、〔楽〕2)を奏し始めます。これに合わせて皇帝は一畳台の上で〔楽〕の舞を舞い始め、途中から衣装を脱いでいき、カルサン姿となります。カルサンは唐人たちが着ている服と同じですが、皇帝は下着として着用しています。さすがに豪華ですね。
団扇に始まり、脱いだ衣服を次々家来に渡すと、それを家来たちは大事そうに手渡しして下げていきます。
2)能の舞事の一つ、中国風の音楽の特色を表現しているとされていて、シテが中国人のときはこれを舞う。

カルサン姿で身軽になった皇帝は、さらに〔楽〕を舞い続けます。唐人たちは楽しそうに足拍子をしています。

この舞は能の〈邯鄲〉の〔楽〕を意識しており、途中で柱をつかんで左足を台から降ろす「空下り」も取り入れられています。能では思わず台から落ちそうになるようすですが、ここでは皇帝がしっかり足元を見て、試しに降りてみようかなといった風情に転用されています。その後すぐ首を左右に振って「止め止め」いった仕草をしますが、その様子が可愛く捉えられていますね。